スマトラ大津波の復興10年の記録をスマホ・アプリで公開
2004年のスマトラ島沖地震・津波の被災と復興の10年を記録したデジタルアーカイブを、防災教育や津波ツーリズムに使える3つのスマートフォン・アプリで公開します。(1)日本での事前学習、(2)被災地での実地学習、(3)日本とインドネシアを結ぶ防災コミュニティづくりへの活用が期待されます。2014年12月26日に被災10周年記念式典にあわせてインドネシアと日本で同時公開し、インドネシアでは大学生を対象にフィールドでの実演講習会も行います。
アチェ津波アーカイブとアチェ津波モバイル博物館は、すでにウェブ上のサービスとして公開しているものです。今回は、それらをスマートフォンのアプリとして提供します。また、新たに公開するアチェ津波被災地メモハン(メモリーハンティング)により、被災地を訪れた人が復興過程の記録に参加できます。
アチェ津波アーカイブ(Android/iOS)
- 津波災害を生き延びた被災者の証言をデジタル地球儀上で表現したアプリ
- 津波遡上高や被災直後の写真記録などとあわせて閲覧でき、空間的な広がりを体感しながら被災の概況と被災体験を知ることができる
- シアクアラ大学津波防災研究センター(TDMRC)(インドネシア・アチェ州)および首都大学東京・渡邉英徳研究室との共同開発
- 入手方法・使い方
アチェ津波モバイル博物館(Android)
- 被災と復興の10年にわたる景観の経年変化を示す画像資料を収蔵したアプリ
- AR(仮想現実)表示機能により、位置情報をもとに、現在地周辺の過去の景観を現在の街並みと重ねて見ることができる
- モバイル端末を使って町全体をオープン博物館にする取り組み
- シアクアラ大学津波防災研究センター(TDMRC)(インドネシア・アチェ州)との共同開発
- 入手方法・使い方
アチェ津波被災地メモハン(Android)
- カメラのファインダー上に過去の風景画像を半透明で重ねることで、過去の画像と同じ構図で現在の風景を撮影して、その画像を他のモバイル端末と共有できるアプリ
- 被災と復興による町の景観の変化を記録できるだけでなく、現在の街並みに至る歴史を共有するコミュニティづくりを助ける
- シアクアラ大学津波防災研究センター(TDMRC)(インドネシア・アチェ州)および国立情報学研究所・北本朝展准教授との共同開発
- 入手方法・使い方
背景
「災害対応の地域研究」プロジェクトでは、2004年のスマトラ島沖地震・津波の発災以来、被災地であるインドネシア共和国アチェ州で、被災と復興過程の調査・研究を継続的に行ってきました。現地の関係諸機関(公文書館、州政府、インドネシア赤十字ほか)の要請を踏まえて、地域研究と情報学の組み合わせにより、被災と復興を記録するデジタルアーカイブを作成・公開するとともに、シアクアラ大学津波防災研究センター(TDMRC)の研究者らの協力を得て、防災分野における日本とインドネシアの国際協力に取り組んできました 。今回のアプリの制作・公開は、これらの取り組みをもとに、成果を広く日本・インドネシア両国の社会に還元するためのものです。
波及効果
3つのアプリは、被災から長い時間が経過し、街の景観から被災の痕跡が失われ、被災の経験者が高齢化するなかで、被災と復興の経験と記憶を世代と地域を越えてどのように継承し、社会で共有していくかという課題に取り組むものです。
これらのアプリを活用することで、日本で復興や防災に取り組む人々にとって、2004年のスマトラの大津波の被災と復興の経験がより学びやすくなることが期待されます。津波遺構を積極的に残して防災研究や災害ツーリズムに活用しようとしているアチェの経験は、日本の被災地における防災教育や災害ツーリズムを実践する際の一つのモデルとなります。
アプリはいずれも日本語とインドネシア語の二か国語で制作されており、日本とインドネシアの両国で使用することが可能です。日本とインドネシアの防災分野の国際協力を推進する上で、手軽に災害経験を共有するツールとして活用されることが期待されます。また、観光ビザの緩和などによる東南アジアから日本への観光客の増加が見込まれる中で、災害多発国であるインドネシアと日本の民間交流においても防災を共通の話題とすることを助けます。
公開後の予定
インドネシアでの公開
- 2014年12月24日、インドネシア共和国アチェ州で国際シンポジウム「情報コミュニケーション技術を活用した防災・減災」を開催し、3つのアプリを公開します。(アチェ津波アーカイブは12月26日に公開予定。)
- 2014年12月26日~28日にアチェ州で開催される防災展示会(アチェ州政府主催)に出展し、インドネシアの学生にフィールドで実演講習を行います。
インドネシアとの研究交流
- 2015年1月12日~19日にシアクアラ大学から6名を招聘して、兵庫県神戸市を訪問して阪神・淡路大震災の被災地の復興と防災の取り組みを視察します。(JST日本・アジア青少年サイエンス交流事業により実施。)
- 2015年3月10日~3月26日にシアクアラ大学から3名を招聘して、宮城県を訪問して東日本大震災の被災地の被災と復興の取り組みを視察します。(JSPS頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラムにより実施。)