「手法としての映像」班
統括班からの期待
- 「手法としての映像」班は、映像を用いて現代における宗教復興現象の解明を試みるとともに、その研究過程を通じて映像を用いた地域研究の方法を検討することを目的としています。これと同時に、「映像の大衆化の時代」における社会と映像のあり方を提示することも期待されています。
- 現在、映像による情報のやり取りは一部の専門家に限られたことではなくなりつつあります。この状況がさらに進むと、組織内の意思決定において、映像が文書に並ぶほどの重要性を与えられる時代が到来するかもしれません。
- 今日では、多くの社会で組織内の意思決定に重要な役割を担っているのは文書であり、それを取りまとめる書記が大きな力を持っています。かつては世界各地に支配層しか読み書きが認められない社会がありましたが、人類社会は誰もが読み書きを学べる方向に進んできました。「映像の大衆化」がこの動きにどのような影響をもたらすのかはたいへん興味深いところです。
- すでに多くの人に指摘されているように、映像は完全に客観的な情報を伝えているわけではなく、そこに作り手の意図や認識が反映されています。それに加えて、映像には作り手が意図するもの以外の情報が織り込まれる度合いが高いという特徴もあります。そのため、文書では書く技術と読む技術がほぼ裏表の関係にあるのに対し、映像では作る技術と「読む」技術が別に発展することがあるかもしれないと思います。
プロジェクト名:
映像実践による現代宗教復興現象の解明を通じた地域研究手法の開発
(京都大学地域研究統合情報センター全国共同利用研究プロジェクト、代表者:新井一寛、期間:2008年4月~2010年3月)
研究目的:
20世紀後半以降、世界各地で宗教復興現象が活発化している。その現象は、近年のグローバル化、消費文化の浸透、各種メディアの発達により、各地域の宗教動向が共鳴・共振の度合いを高めながら、より複雑な様相を呈している。特に、映像メディアの発達による宗教団体の映像活用の活発化、宗教映像のグローバル化と氾濫は、共鳴・共振、複雑化の主な要因である。
また近年、各種映像機材の利便化により、研究分野での映像実践が盛んになっている。それは、映像の撮影・編集・上映、批評・解釈、映像による被調査者とのコミュニケーション、研究成果の社会還元、アーカイブズの構築など様々な実践をとっている。
以上を踏まえて、本共同研究の目的は、主に次の2点に集約される。①現代宗教復興現象における宗教、ナショナリズム、「癒し」の複合構造を、映像実践を通じて解明する。②宗教を研究対象とした地域研究における有効な映像実践を追求することを通じて、「映像地域研究」を開発する。
メンバー:
新井一寛(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・研究員)(研究代表者)
飯田卓(国立民族学博物館・准教授)
池田有日子(京都大学地域研究統合情報センター・研究員)
石倉敏明(多摩美術大学芸術人類学研究所・副手)
石原香絵(NPO法人映画保存協会・副代表)
岩谷彩子(広島大学大学院社会科学研究科・准教授)
岩谷洋史(総合地球環境学研究所・研究員)
内田順子(大学共同利用機関法人国立歴史民俗博物館・准教授)
榎本香織(東京大学大学院人文社会系研究科・博士課程)
大石高典(京都大学こころの未来研究センター・特定研究員)
小田雄一(京都大学総合人間学研究科・博士課程)
葛西賢太(宗教情報センター・研究員)
門井八郎(青山カウンセリングオフィス・心理カウンセラー)
川瀬慈(日本学術振興会・特別研究員/京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・研究員)
川瀬貴也(京都府立大学文学部・准教授)
北村皆雄(ヴィジュアル・フォークロア社・代表)
小島敬裕(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)
坂川直也(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士後期課程)
シッケタンツ・エリック(東京大学大学院人文社会系研究科・博士課程)
高尾賢一郎(同志社大学大学院神学研究科・博士後期課程)
高岡豊(上智大学アジア文化研究所イスラーム地域研究拠点・研究員)
田邊尚子(一橋大学大学院社会学研究科・博士課程)
中島岳志(北海道大学公共政策大学院・准教授)
藤岡朝子(NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局・コーディネーター)
古川優貴(一橋大学大学院社会学研究科・博士課程)
見市建(岩手県立大学総合政策学部学部・講師)
南出和余(京都大学地域研究統合情報センター・研究員)
村尾静二(総合研究大学院大学葉山高等研究センター・上級研究員)
柳沢英輔(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)
山内隆治(記録映画保存センター・社員/東京大学情報学環・学際情報学府修士課程)
山下俊介(京都大学総合博物館・教務補佐員)
横田貴之(財団法人日本国際問題研究所・研究員)
レナト・リヴェーラ(京都大学大学院文学研究科・博士課程)
和崎聖日(京都大学人間・環境学研究科・博士課程)
関連リンク: