「文理接合」班
統括班からの期待
- 地域研究には人文社会科学系の地域研究と自然科学系の地域研究があります。これまで互いにあまり接点を持たず、それぞれ進められてきました。文理融合の必要が唱えられていますが、文科と理科が具体的にどう融合できるかについての明確な了解はありません。この研究班では、一足飛びに文理の融合を求めるのではなく、文科と理科がどのように接合し得るかを検討します。
- 地域研究とは、いずれの学問分野でも、既存の方法では現実世界が十分に掴みきれないという認識から既存の学問分野の方法を改良・改造しようとする試みとしての側面をもっています。では、自然科学系の地域研究は、自然科学系の既存の学問的ディシプリンのどの部分をどのように改良・改造しようとして地域研究の道を求めたのか。この点を考えることで、自然科学の学問体系における自然科学系地域研究の位置づけが明らかになります。
- その上で、自然科学系地域研究の知見を人文社会科学系地域研究と接合するためにどのような仕組みがあり得るかを考えます。
さらに、地域研究を通じた文理接合の試みを通じて、これまで文科と理科を互いに大きく異なるものとして捉えていた次のような見方の再検討にもつながります。
- 一般に、自然科学は科学的再現性や反証可能性を重んじる点で人文社会科学と異なると見られています。しかし、現実世界が抱える諸問題への取り組みを意識すれば、自然科学であろうとも、方法上の厳密さの追究自体を優先するのではない態度があり得るはずです。このことが自然科学系の研究者から積極的に示され、これによって自然科学と人文社会科学の差異を過度に強調する見方が批判的に再検討される契機となることが期待されます。
プロジェクト名:
自然科学者による地域研究方法論の構築
(京都大学地域研究統合情報センター・地域研萌芽研究、代表者:柳澤雅之、期間:2009年5月~2010年3月)
研究目的:
自然科学者による地域研究の蓄積はとりわけ日本で独自の発展を遂げてきた。とくに、農学や林学、生態学をベースにした地域研究関連分野の蓄積は厚く、地域における人と自然の関係についての研究から、より壮大な文明論・文化論にまでおよぶ。本研究では、研究対象とする地域や分野を横断する形で、我が国の自然科学系出身の第一線の地域研究者がこれまで独自に展開してきた地域研究の方法論を持ち寄り、その共通点と差異を議論するなかで、言語として継承可能な形で地域研究方法論を構築することを試みる。これまで地域や専門分野、研究者ごとに異なった方法論を、地域研究を志す者がトレーニングに利用可能な形で提示することにより、地域研究者数の増加や研究レベルの質的向上に加えて、自然科学をベースにした地域研究の特徴を明らかにすることで、複合共同研究の課題でもある、地域研究全体の理解を深めることに大きな意義がある。
メンバー:
柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)(研究代表者)
井上真(東京大学大学院農学生命科学研究科・教授)
梅崎昌裕(東京大学大学院医学系研究科・准教授)
甲山治(京都大学東南アジア研究所・准教授)
富田晋介(東京大学大学院農学生命科学研究科・助教)
長野宇規(神戸大学大学院農学研究科・助教)
星川圭介(京都大学地域研究統合情報センター・助教)
山口哲由(京都大学地域研究統合情報センター・学振特別研究員)
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