研究会の記録(「研究者の広がり」班)
- 「研究者の多様化の時代における学協会のあり方――日本マレーシア研究会(JAMS)の学会化から考える」
- 日時:2009年12月12日(土)午後1時10分~3時40分
- 会場:大阪市立大学 学術情報総合センター1F文化交流室
(大阪市住吉区杉本3-3-138)
http://www.osaka-cu.ac.jp/info/commons/access-sugimoto.html
- 共催:京都大学地域研究統合情報センター(共同利用研究「公共領域としての地域研究の可能性:東南アジア海域世界における福祉の展開を事例として」)、日本マレーシア研究会(JAMS)、地域研究コンソーシアム(地域研究方法論研究会)
内容
司会 山本博之(京都大学)
1.金子芳樹(獨協大学)
「JAMS 学会化の経緯、課題、展望:法人化の流れの中で」
2.西尾寛治(防衛大学校)
「JAMSと地域:研究対象はマレーシアか、近隣地域も含むのか」
3.岡本義輝(宇都宮大学博士課程)
「民間企業での経験を踏まえ、JAMSに期待するもの:マレーシアの日系企業に役に立つ研究も」
4.吉村真子(法政大学)
「マレーシア研究と学会の連携:国際的・国内的な連携の可能性の視点から」
5.宮崎恒二(東京外国語大学)
「研究者コミュニティを超えて」
討論
趣旨
日本マレーシア研究会(JAMS)は、1992年の設立から今年で18年目を迎えました。この間、関東・関西・九州・クアラルンプールでの地区例会の実施、会報やウェブサイトを通じた情報発信、社会連携ウィングによる公開セミナーの実施などにより、JAMSは社会に開かれた学術団体を目指して活動の幅を広げてきました。このような発展を遂げてきたJAMSが名称を「日本マレーシア研究会」から「日本マレーシア学会」に変更しようとしていることは、JAMSのこれまでの活動の展開から見て自然な流れであると思われます。その一方で、すでに数多く存在する学会に加えて新しく学会を作ることの意義が問われることにもなります。
それらの問いの中には、JAMSに固有の問いだけでなく、研究を行う人々の幅が広がり、学会に参加する目的が多様化している現在、学会をどのように設計し運営するかという一般的な問いとも繋がるものがあるように思います。一例を挙げれば、大学院生を含む幅広い会員に研究大会や学会誌でなるべく研究発表の機会を提供しようとすることと、研究大会や学会誌の研究内容の水準を高く維持することの間でどのように折り合いをつけるのかという課題は、多くの学会に共通したものだろうと思います。また、地域名を冠した学会としては、会員間の学問分野の違いをどのように扱うのか、さらに、研究対象地域に関わる研究者以外の人たちとどのような関係を結ぶか、そして研究対象地域に暮らす人たちとどのような関係を結ぶかという課題もあります。
JAMSは、東南アジアやアジアを名称に冠する既存の学会と積極的な連携をはかりつつも、それらの下部団体のような存在になることを目指すのではなく、組織が若く活動の柔軟性がきくことなどの利点を生かして、既存の学会に見られないユニークな活動を積極的に行い、それを通じて学会のあり方を世に問う方向性を目指すべきではないでしょうか。JAMSの学会化という具体的な事例にひきつけて、学術が現在置かれている状況における学会のあり方を考えたいと思います。
報告要旨