研究会の記録(「研究者の広がり」班、立命館アジア太平洋大学会場)
- 社会経験に根ざした研究を求めて:外交・教育・企業
- 日時:2009年7月18日(土)午後2時~5時
- 会場:立命館アジア太平洋大学B棟3階SPR 1
- 共催:京都大学地域研究統合情報センター共同利用プロジェクト「公共領域としての地域研究の可能性」、APU東南アジア研究フォーラム、日本マレーシア研究会(JAMS)
内容
司会: 篠崎香織(北九州市立大学)
趣旨説明: 西尾寛治(防衛大学校)
報告1:川端隆史(外務省)
「外交実務と学術研究の連続性と非連続性:マレーシア外交にみられる公正/正義概念の研究を事例とした報告」
報告2:井口由布(立命館アジア太平洋大学)
「多文化環境における教育と研究の実践報告」
報告3:近藤まり(立命館アジア太平洋大学)
「多文化環境における企業と経営学に関する研究と教育の実践報告」
討論: 山本博之(京都大学地域研究統合情報センター)、笹川秀夫(立命館アジア太平洋大学)
趣旨
人びとの営みを研究対象とする人文社会科学においては、実社会での人びとの生活と研究を完全に切り離すことはできない。したがって、研究者の社会経験が豊かであればあるほど研究の深みや広がりが増すことになる。この研究会は、その深みや広がりを個別事例についての研究発表を通じて捉えようとする試みである。
外交、教育、企業などの実務の分野では、文化背景の違いなどにより、業務を遂行する上で自他の利益が相反する状況に置かれることが少なくない。自分の利益を守った上で相手の利益損ねない関係を築き、維持することが必要だが、そのための即効性のある理論はなく、現場で試行錯誤を重ねて蓄積された実践知が業界や分野ごとに継承されているのが現状である。
このような各業種の実践知はどのような形にすると研究者業界にも継承しうるのか。そして、それは学術研究の発展にどのような影響をもたらすのか。これらの問いについて考える上で、各業界の専門性を身につけた上で広義の研究の道を志した人びとの経験をもとに考えてみたい。
この研究会では、まず、実務の世界に主軸をおいて活動してきた人々にとっての「研究」とはどのような位置づけにあるのか、実務で培った経験を「研究」の道にどのように生かしてきたのか、また、実務の経験を研究に生かす上でどのような限界に直面し、それを研究者や実務家との連携によってどのように乗り越えてきたか(乗り越えようとしているか)などを紹介していただく。その上で、それぞれの報告者から具体的な研究テーマについて報告をしていただく。研究内容に研究者の経歴や思いが反映されるのだとすれば、実務経験豊かな人たちによる研究発表には必ず実務で培った経験が滲み出てくるはずである。討論を通じて参加者どうしの議論の方向性の違いを見つけ、そこに積極的に目を向けることを通じて、研究者の過去の経歴(特に実務家としての経験)が研究内容にどのように反映されるのかについても考えてみたい。
報告要旨