東南アジアにおける映画研究拠点形成のためのワークショップ開催
東南アジアのカンボジア、ラオス、タイを対象に、映画業界関係者と地域研究者の合同ワークショップを通じて、制作・流通・批評の各分野を総括した映画研究のための持続的な人的ネットワークの形成を目指します。拠点の1つを大学等の学術研究の場に置くことにより、その拠点が将来にわたり継続的に機能することが期待されます。
背景
東南アジアでは、フィリピン、タイ、インドネシアなどの映画大国では、映像アーカイブをはじめとする映画研究の施設が整備され、人的ネットワークを含めた映画研究の環境が整っています。しかし、それ以外の国々では映画研究の環境が十分に整っていません。映画制作・流通に携わる映画業界関係者が映画研究のハブになっている様子が見られますが、個人の努力に依存している部分が多く、中長期にわたる映画研究の人的ネットワークを整えていくにはさらに別の仕組みも必要であるように思います。
短期的かつ直接的な経済的利益が強く求められないという点で、学術研究は中長期的な人的ネットワークの拠点となりえます。映画研究はまだ少なくても、文学や音楽や舞台芸能などの関連領域の研究が映画にも関心を向けることで、映画に関心を持つ研究者の人的ネットワークが作られます。これを映画業界の人的ネットワークと接合させることで、制作・流通・批評を含めた幅広い分野をカバーした映画関係者の持続的な人的ネットワークとなり、産業と文化芸術の両面で映画の発展に寄与することが期待されます。
(撮影:吉田育代)内容
カンボジアとラオスを主要対象国とし、両国と文化・社会的に密接な関係にあるタイを含む3国で、映画業界関係者と地域研究者が巡回して合同ワークショップを行います。以下のことがらに留意します。
(1)大学等の学術研究の場に拠点の1 つを置くことで、人的ネットワークが持続的に機能することが期待されます。
(2)映画に関心を持つ人の輪を広げるため、狭義の映画関係者に限定せず、隣接分野・関連分野を専門とする人々を招き入れます。
(3)日本と対象国の二国間の関係を強化するだけでなく、対比や越境の観点を積極的に取り入れることで、東南アジアの国々どうしの繋がりを促します。
(4)現地事情に通じた地域研究者が媒介役になって現地語で議論することで、地域の事情を踏まえた映画情報を共有し、その国際的な発信を助けます。