支援と復興

どの災害も、被災した地域(被災した人)と被災しなかった地域(被災しなかった人)を分ける。被災地・被災者にとってはどのように復興するかが、被災しなかった地域・人々にとってはそれをどのように支援するかが問われる。

復興支援では、被災者が自分たちで復興に取り組む自助、国や地方行政などの公的機関が行う公助、地域コミュニティやボランティアが行う共助がそれぞれ進められる。近年の大規模自然災害では、この自助・公助・共助を国単位ではなく世界単位で見る必要があります。国際機関や外国政府による支援や、国際NGO・外国NGOや個人による支援も見られる。また、災害対応を専門とする業種による支援活動だけでなく、災害対応を直接の専門としない組織や個人による支援活動も多く行われるようになっている。日本では、1995年の阪神淡路大震災を契機にボランティア社会が顕在化したと言われたが、インドネシアでは2004年のスマトラ沖地震・津波を契機に国内のボランティア社会が顕在化した。しかも、2004年のスマトラ沖地震・津波は、日本の多数の災害復興支援ボランティアが国外の被災地を訪れて支援活動を行うようになる契機ともなった。

災害対応においては、災害は同じ場所で繰り返し起こるという災害サイクルの考え方に基づき、ある災害への対応が次にその場所で発生する災害に対する備えとなるような復興支援が進められる。さらに、災害対応の地域研究においては、復興が防災面での備えとなるだけでなく、その社会が潜在的に抱えている課題を解決し、被災を契機によりよい社会を作り出すような創造的復興が求められる。そのためには、災害に関する理学・工学の知識だけでなく、一見すると災害と関係ないかに見える政治・経済や文化・歴史に関する知見も重要な役割を果たす。

その一方で、特に公的な復興事業においては平等性・公平性や即効性・効率性が必要とされ、また、投入できる時間と資源に限りがあるため、1人1人の事情に配慮するよりも全体で平均的に支援がいきわたることが優先されることも多い。国際機関や国際NGOによる人道支援でも同じようなことが言える。

そのため、支援現場では、平等性や効率性を優先する考え方と1人1人の被災者が置かわれた状況に即した支援を行う考え方とのあいだでどう折り合いをつけるかが重要となる。さらに、支援者が職業的な専門家ではないことが多いため、支援者側でも自分たちの活動に納得できるような支援事業が求められる。

災害時の復興では被災者のニーズに沿った復興が必要だと言われるが、復興過程において被災者と支援者の見解が食い違うことは避けられない。それを、当時者と部外者と分けるのではなく、被災者や支援者がそれぞれ自前のビジョンを持ち寄り、衝突や摩擦を経験しながらよりよい復興計画を練り上げていく。

また、復興過程は被災地での復興事業の完了をもって終わるわけではない。支援の現場に関わった人々は、事業完了後もその経験と知見をもって新しい現場に臨んでいく。その意味で、支援と復興の現場はそれぞれの専門分野にとってのフロンティアであり、出会いの場でもある。

研究関心

これまでの取り組み

人道支援事業をどう評価するか

支援を受ける側の論理と対応

日本型NGOの展望

流動性の高い社会

人道支援とコミュニティの形成

裏切られる被災者像